〜日本の現場が直面する人材確保の危機とその打開策〜
■出国制限という新たな障壁
2025年に入り、ミャンマーでは軍事政権による海外出稼ぎの制限が強化され、特定技能制度を活用して日本で働こうとする人材の出国が困難になっています。OWIC(海外就労許可証)の発給停止や制限、送り出し機関への人数制限、さらには若年層男性の出国凍結など、制度的な障壁が急速に高まっています。これまでミャンマーは、介護・外食・建設などの業界において、特定技能人材の供給源として重要な役割を果たしてきました。特に日本語能力が高く、勤勉な人材が多いことから、企業側の評価も高かったのです。
■業界が受ける影響
この出国制限により、以下のような影響が顕在化しています:
- 介護業界:高齢化が進む中、施設運営に必要な人材が確保できず、サービス提供に支障が出始めている。
- 外食業界:厨房・ホールスタッフの不足が深刻化し、営業時間の短縮や店舗閉鎖に追い込まれるケースも。
- 建設業界:インフラ整備や災害復旧に必要な技能者の確保が難しくなり、工期遅延のリスクが増加。
一部では、タイ経由での渡航やベトナムに留学してから来日するルートの利用も報告されていますが、これは違法出国や失踪者の増加につながる懸念があり、企業としては採用リスクが高まるばかりです。
■今後の展望と対応策
この状況を受けて、企業や業界団体は以下のような対応を模索しています:
- 人材供給国の多様化
ネパール、スリランカ、バングラデシュなど、他国からの採用ルートを強化する動きが加速しています。 - 国内人材の活用
高齢者や主婦層、定年後の再雇用など、国内の潜在的労働力の活用も再評価されています。 - 制度の柔軟化と政府間協議
日本政府とミャンマー政府との間で、特定技能制度の安定運用に向けた協議が求められています。 - DXによる業務効率化
人手不足を補うため、介護ロボットやセルフオーダーシステムなど、デジタル技術の導入も進んでいます。
■まとめ
ミャンマー人材の出国制限は、日本の現場に大きな影響を与えています。しかし、これを契機に人材戦略の見直しや制度改革を進めることで、より持続可能な労働力確保の道が開ける可能性もあります。企業は今こそ、国籍にこだわらない柔軟な対応と人事戦略が求められているのではないでしょうか。